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いつかまた会える時まで

 


※朗読用台本、というか即興小説そのまんま
 一人劇用ですな


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  みなさんは電話ボックスなんてものが有ったことを覚えているだろうか?


  こんな文章を書いていると自分も歳を取ったなー
  なんて考えてしまう
  いや
  実際歳を取ってしまったのだが…


   閑話休題


  今も
  なお置いてある電話ボックスがある


  それは街中でも
  道路の脇にでもなく
  何も無い、山中の真っ只中にあった


  そこには毎年、何人もの人が訪れるらしい


  一人入っては笑顔になり
  一人入っては泣き崩れ
  一人入ってはなんとも言えない表情をする


  山中にポツンとある電話ボックス
  電話回線なんてあるはずも無く
  受話器からはツー、ツーと音が響くだけだ

 

  その電話ボックスに入ると
  私はぽつりぽつりとしゃべりだした


  「今はどんな生活してるの?
   ご飯はちゃんと食べてる?
   たまには布団を干さないとダメだよ?
   次会う時は何して遊ぼうか?今度…今度は…」


  そんな事を言っていると
  気づかないうちに自分の頬を涙が伝っている事に気づいた

   
  あんなに一緒にいたのに
  もうあの人は自分の傍にいない


  いつか会いに行ける
  分かってはいた


  でも
  どうしても
  今、声が聞きたかった


  「ごめんね、もう泣かないって約束したのにね。」


  「大丈夫だよ、こっちは元気でやってるから」


  届かない声を
  一人電話ボックスの中
  ツー、ツー、と
  音のなる受話器に向かって
  話しかける


  「バイバイ」


  と言って
  ガチャリと受話器を下ろす


  こんなにも涙を流したのはあの時以来だろう


  しかし
  少しの間だけでも


  もしかしたら
  神様がちょっとだけ
  むこうのあの人と
  お話させてくれるかもしれない


  そんな想いで人はこの場所に集まる


  電話


  それは私たちにとって
  遠くの人と連絡をとる手段


  そんな電話ボックスは、ポツンとあの場所に


  今も

  そして、これからも
  あの場所であり続けるだろう

 

 

 

  END

 

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