top of page

「彼女に恋した男 の話」

 


男♂  :
??♀ :


間を結構使ってますけど、特に意味はないので感じたようにやってください。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


男 「惚れました僕と付き合ってください。」


? 「は? 何言ってんの? バカなの? 」


男 「あれー? おかしいなー? モテない人だと思って告白したのに。」


? 「あんたね…まぁいいわ、事実だし。」


男 「じゃあ、付き合ってくれる? 」


? 「あんた、私が何なのか知ってるの? 」


男 「重々承知で告白してますよ。」


? 「言い方を変えるわ、私の気分であなたは死ぬのよ? 」


男 「奇遇ですね!僕も僕の気分でいつでも死ねるんですよ!」


? 「気持ち悪いやつね。」


男 「僕もそう思います。」


?M「放っておけばその内どこかへ行くだろうとそう思っていた。
   思っていたのだが、一週間経ってもこいつは私のそばにいた。」

 

 

男 「貴方の好きなタイプはどんな方なんですか? 」


? 「貴方とは正反対の人。」


男 「僕と一緒に写真を撮りましょう!」


? 「貴方と一緒に写るなんて虫唾が走る。」


男 「嫌いな物とかありますか? 」


? 「目の前にいるわね。」


?M「これだけ言えば離れるだろうと思っていた。
   だけど、こいつは離れるどころか毎日のように
   私に会いに来た。そんな事が一か月くらい続いた頃だ。
   付きまとわれる鬱陶しさと、
   言動が読めない気持ち悪さから等々我慢できなくなった私はこいつを殺そうとした。」

 

 

男 「ぐはっ…。」


? 「忠告はしたわよね? 
   貴方の命は私の気分次第だって。
   私がこれをこちらに寄せれば貴方は確実に死ぬ。体から首が飛ぶわよ。」


男 「あはは、うれしいなぁ。」


? 「? 」


男 「君が僕に悪意をぶつけてくれている。」


? 「あんた何を…」


男 「僕の命にまだそんな価値があったなんて。うれしいなぁ。」

 

 

?M「彼は笑っていた。心の底から心底笑っていた、
   だから私は心底ゾッとした。
   自分の命に、存在に、何の価値も見出していない。」

 

 

男 「初めて僕と向き合ってくれてありがとう。」


?M「こんな彼の弱さを、儚さを目の前にして私は殺す気を失った。」

 

 

?M「あれからどれ程の時が経ったのだろう? 私には時間の感覚がない。
   そういった存在だから。」

 

 

男 「あ、そうだ!僕と結婚してくれませんか? 」


? 「しません。
   これで断るの何回目? 
   それよりもそんなおざなりなプロポーズがある? 」


男 「ダメかー。出会ってからもう一年経ったから
   そろそろ行けるかと思ったんだけどなー。」


? 「その言い方だと
   さも付き合ってるかのように聞こえるんだけど? 」


男 「あれ? 」


? 「貴方と交際を始めた覚えはないから。」


男 「ええっ!? 」


? 「いや、驚きの意味がわからないわ。
   なんども告白されているけども
   全て断ってるわよね? 」


男 「そ、そんなバカな…!
   二人でエアーズロックの上で
   死ぬときは一緒だって言って永遠の愛を誓い合ったのに…!? 」


? 「残念、覚えてない。
   というより誓い合ってないから。
   二人で旅行とか行ってないし、私国内から出たこと無いし。
   なんでバレない方がおかしいような嘘を吐くの? 」


男 「それはさておき。」


? 「さておいちゃうんだ。」


男 「一周年記念ってわけじゃないですけど、
   明日一緒に出掛けませんか? 
   満天の星が見える綺麗な場所を見つけたんですよ。
   星を見るの好きだったでしょ? 」


? 「はいはい、わかったわかった。
   もう好きにすればいいわ。」


男 「わぁい!やったー!!
   デートだデート!!イチャイチャできるぞー!
   明日が楽しみだなぁ!!」


? 「せめて私が見てないところではしゃぎなさいよ…。」


男 「ういっす。」


? 「ねぇ。貴方どうしてそんなに私にこだわるの? 
   貴方には貴方に合う素敵な人がいるでしょうに。」


男 「うーん…。顔が綺麗でおっぱいが大きいからですかね? 」


?M「これを真顔で面と向かって言えるクズは珍しい。」


男 「というのはまぁ半分冗談として、本当のところは
   貴方が人を殺す前に何とも言えない眼をするでしょう? 
   それが僕には心地よかったからです。」


? 「流石に引くわ。
   常日頃からドン引きなのにさらに引くわ。」


男 「そうですか? 」


? 「どこまで自分の評価をマイナスにすれば気が済むの? 
  ・・・貴方マゾなの? 」


男 「貴方が望むならマゾになりますけど。
   …僕は今までいろんな人に足蹴にされてきたけれど、
   貴方のそれには思いやりのようなものを感じたんです。」


? 「思いやり? 」


男 「はい。僕と貴方の力関係はさながら蟻とゾウです。」


? 「蟻とゾウね・・・・・・もっとも、蟻は群れるとゾウを殺すらしいけれど。」


男 「博識なんですねー。
   ともかく、僕の命は貴方の気分次第で、
   その得物を振り下ろすだけで意図も簡単に僕を殺せるわけです。
   だけど、貴方は僕を殺さずにいてくれる。
   殺さずにこうして僕と戯れに付き合ってくれている。
   僕が今生きているのは貴方が優しい証拠です。
   振り下ろされるなら僕は貴方がいい・・・。
   それじゃあ、明日の十時にここで待ち合わせって事で!」

 

▼男 走って遠のいていく


 

? 「恰好つけたがり屋め。
   最近ずっと私に隠れて探し回ってたのはこれか、
   星の事なんて興味ないくせに。
   普段すっごくいい加減な奴だけど。
   一年とか憶えていたのね…。
   変なところで生真面目なんだから…。
   ……たまには甘やかしてやるか。」

 

 

?M「待ち合わせのの場所にいくと
   横になって待つ彼の姿があった。」


男 「ああ。約束通りきてくれたんですね。」


? 「!? 」

 

 

?M「彼の体から下半身が消えてなくなっていた。」

 

 

? 「はは…なにこれ…意味わかんない。」


男 「いやー、ちょっとそこで転んじゃいまして。」


? 「流石にその嘘は無理があるでしょ!
   誰かにやられたの!? 」


男 「あー、まぁそんな感じですかね? ははっ。」


?M「イジメにあった事を隠そうとする
   いじめられっ子みたいだった。」


男 「貴方に対する悪口が聞こえましてね。
   ムカついたのでつい……。」


? 「子供か…。馬鹿。」


男 「ごもっとも。」


? 「下半身はどこ? くっ付ければまだ…」


男 「ああ、それはいいです。
   もう大分出血しました。
   意識があるのが不思議なくらいでね。
   喋ってないと意識がとんじゃいそうなんですよ。
   だから、できれば会話に付き合ってください。」


? 「どうしてそんな簡単に? 自分の命でしょう? 」


男 「自分の命だからですよ。
   僕は今まで他人の踏み台にされながら生きてきたんです。
   必要とされた事もないし、愛されたこともない。
   だからこそ、消えても誰も困らないし、
   死んでも誰も悲しまない。」


? 「……なんで笑ってるのよ。
   悲しいでしょ? そんなの!」


男 「悲しい? ああ、そうか。
   これって悲しい事だったんだ。」

 

 

?M「初めて知ったという顔。
    私はその表情を見て全てを悟った。
    この人間はとっくの昔に終わっていたのだと。」

 

 

? 「誰も悲しまないですって? …私はちょっと悲しいわよ…。
   少しだけど…
   ほんの少しだけど…貴方の事気に入ってたんだから。」


男 「……ははは、何てことだ。
   僕が死んでも誰も悲しませない事だけが自慢だったのに。
   僕の取り柄無くなっちゃったじゃないですか。
   責任とってくださいよ。ははっ。」


? 「じゃあ、私に気に入られた事を自慢すればいいじゃない。」


男 「そう…そうですね。そうします。
   ・・・・・・ああ、そろそろ限界だ。
   ねえ、そろそろ僕を殺してくれませんか? いつものようにあの眼で。
   僕の大好きなあの眼で殺してください。」


? 「こんな時にまで…貴方って人は…。」

 

​間


男 「......ああ、僕の知らない眼…いつもと違う眼だ。
   だけど、そんな眼が今の僕には心地いい。
   ありがとう。」


?M「そして私はその大きな鎌を思い切り振りかざした。
   憐憫でもない、哀れみでもない。
   いつものように、
   人を愛する心に、さながら求愛するように。
   振りぬいた爪痕を残すその姿は
   生き様のように無様であり。
   死に様のように美しかった。」


? 「貴方は私がちゃんとあっちの世界に渡してあげる。
   だから、少しは私に気に入られた事を思い知って頂戴。
   自分には何も無いなんて思わないで頂戴。
   ここに一人、あなたを必要とした私がいたのだから。」

 


END

bottom of page