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【ロストムーン】


桃華♀  :


カーミラ♀:


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桃華    「とうりゃーっ!……ふぅ…これで終わり?」

 

 

▼あたりを見渡す

 

 

桃華    「ありゃ、みんな逃げちゃったわね、道場破りも破る場所が無くなってきちゃったわ...はぁ...。」


桃華М   「空手に柔道剣道に合気道、私を満足させてくれるものはなかった。
       唯一昔おじいちゃんが教えてくれた剣術。
       最後の技を習得する前に、おじいちゃんが亡くなったから...それだけは心残りなのかな。
       だけど!!王立高校2年 文武両道 才色兼備(さいしょくけんび)のこの私
      「鬼武 桃華   (おにたけ とうか)」を満足させてくれる人は存在しないの?
       だけど...一度くらいは私の全身全霊を賭(と)して戦ってみたい!
       そんな幻想を願うのは難しいのかしら...。」


桃華    「あー!もうこんな時間じゃない!早く帰らなくっちゃ...
       えっ、なに?これは…殺気...
       いえ、殺気なんてそんな温いものじゃない...!?」


カーミラ  「いい夜ねお嬢ちゃん」


桃華    「!!」

 

 

▼桃華周囲を見渡す

 


カーミラ 「私の気配に気づくなんて、人間にしては珍しいわね。
      今日は綺麗な満月でしょ?少し心が昂る(たかぶ)わ。
      あなたもそう思わない?」


桃華   「誰っ!」

 

 

▼桃華振り向く

 

 

カーミラ 「この国の人間は礼儀を知らないのかしら?人に名前を聞く時は先に自分の名を言うものでしょう?」


桃華   「あんたみたいな怪しい奴になんで名乗らなきゃならないのよ!」


カーミラ 「あらあら、淑女がそんな言葉づかいしちゃ駄目よ。」


桃華   「あんたのその気配、人間とは思えないわ一体何者なのよ!?」


カーミラ 「あら?なかなか察しがいいのねお嬢ちゃん。仕方がないから私から自己紹介してあげる。
      私はカーミラ。不死人の始祖、たしかこっちの国では吸血鬼って呼ばれてたかしら?。」


桃華   「吸血鬼?バッカじゃないのそんなのいるはずが…。」


カーミラ 「失礼しちゃうわね、折角こんな辺境の地にやって来て初めて会った人間にそんな風に言われるなんて。」


桃華   「当り前じゃない、そんなの...信じられるわけ・・・。」

 

 

▼カーミラ少し間を置き

 

 

カーミラ 「なら信じさせてあげる。
 (詠唱) 妾(わらわ)が命ずる、亡者共よ彼(か)の者をアビスに追放せよ。」


桃華   「な、なに!?足が地面に引っ張られる!?」


カーミラ 「どう?信じてくれたかしら?」


桃華   「くっ!離せっ!!」


カーミラ 「抗っても無駄よ、亡者達は生きた人間が大好きなんですもの。」

 

 

▼カーミラ少し驚く

 

 

桃華   「舐め・・・ないでよねっ!!」


カーミラ 「あらあらまぁまぁ、自力で脱出するなんて面白い人間ね。
      長年生きてきたけどそんな事が出来たのは貴方が初めてじゃないかしら。
      まぁ、記憶に無いだけかもしれないけれどね。ふふっ…。


桃華   「はぁはぁ…、なんのつもりなのよ…」


カーミラ 「認めてあげる、貴方がただの人間じゃないって事。だから教えてちょうだい、あなたの名前。」


桃華   「私の名前なんて聞いてどうするつもりよ」


カーミラ 「あら、だって名前がわからないとあなたの事を呼べないじゃない?」


桃華   「桃華、鬼武桃華よ!そしてついでに教えてあげる!
      その高飛車な態度が気に入らないわ!でやぁっ!!!!」

 

 

▼雅飛び掛かる

 

 

カーミラ 「自己紹介してすぐに飛び掛かってくるなんて無粋ね。
      あなたとはちゃんとした時間と場所で楽しみたいわ。」

 

 

▼カーミラが桃華から少し離れる

 

 

桃華   「くっ、簡単にあしらわれた...体術じゃ無理か…」


カーミラ 「あら?もうこんな時間。もう少し貴方と遊びたかったのだけれど…
      少しやらなければいけない事があるの。」


桃華   「なにをするつもり!!」


カーミラ 「簡単な事よ、月を貰いに来たの。貴方の頭上にある月を。」


桃華   「そんな事をしてどうするつもりなのよ!」


カーミラ 「・・・どうしてですって?単純な話よ。
      私が夜を独占したいから、それに人間なんかに月のある世界はもったいないわ。
      私たちヴァンパイアにこそ相応しい、そうは思わない?」


桃華   「あはは、面白い妄想ね!そんな大層な事が貴方にできるとは思わないわ。
      一人で世界を変えちゃうって事なんでしょ?」


カーミラ 「無理?ふふふっ、まさに矮小(わいしょう)な人間の考えそうなことね」


桃華   「なんですって?まさか本当に…いや、そんな事できるわけ…」


カーミラ 「まだ私を疑うのね?知ってる?吸血鬼の眼には不思議な力があるの
      異性であれば魅了し、同性であればその身を縛る事が出来るの。」

 

 

▼桃華はカーミラの眼を見てしまう

 

 

桃華   「!?か、体が動かせない・・・」


カーミラ 「今度こそは信じてくれたかしら?」


桃華   「そんな、まさか本当に…」


カーミラ 「貴方はそこで月が無くなるのを見守っていてちょうだいね。
 (詠唱) 宵闇(よいやみ)の女王が命ずる、
      人知を超えし五凶星(ごきょうせい)の力によりて妖星(ようせい)に染まりし月、
      赤く染まりし妖星の月、それ然り(しかり)我が物となりて我に染まれ。」

 

 

▼月無くなる

 


桃華   「う、嘘…本当に月が…消えた…。」


カーミラ 「やっぱりまだ信じてくれてなかったのね、可愛そうな子。
      だけど目的は達したわ、この世界のお月さまは私の物になった。」

 

 

▼桃華急に怖くなり少し震え出す

 

 

桃華   「ば、化け物…」


カーミラ 「や~ね~、化け物なんて言っちゃや~よ。ちゃんと名前で呼んでちょうだい。」


桃華М  「ダメだ…足が震えてる、心臓が破裂しそう。これが恐怖?
      私には何もできないの?…無理、そう無理よ…」


カーミラ 「あらあら急に元気が無くなっちゃったわね。やっぱり人間なんてこんなものかしら…
      はぁ、がっかりだわ。」


桃華   「無理だよ…」


カーミラ 「そう残念ね。」

 

 

 

 

桃華   「このまま諦めるなんて私には無理よ!!!」

 

 

▼カーミラが急に悪い顔になる

 

 

カーミラ 「ふふ、あはは、あはははははははっ!!!そうよ、そうでなくちゃ面白くないわ。
      認めてあげる私のおもちゃとして。でも今の貴方を相手にしても面白くないわね。
      だって震えているもの、弱い者イジメは好きじゃないのよね。
      だから少し待っていてあげる。明日の0時またここで会いましょう。」


桃華   「ま、待ちなさいよっ!!」


カーミラ 「明日の夜を楽しみにしてるわ!じゃあね~。」

 

 

▼カーミラどっか飛んでいく

 

 

桃華   「くっ、行っちゃったか…でも、まだ戦える。うん、戦えるんだ。」

 

 

▼家に到着

 

 

 

桃華「ただいま…って言っても誰もいないか。このままベッドに入りたいけど
   …そうもいかないもんね。あ、ニュース速報で月の事言ってる。
   そりゃそうだよね。自分でも信じられないんだもの。
   ・・・・・・体術はまったく歯が立たなかった。ならもう決まってる対抗できる武器が必要なんだ。
   たしか家の倉庫におじいちゃんが残してくれた刀があったはずなんだけど、、、探しにいくかな。」

 

 

▼倉庫ゴソゴソ

 

 

 

桃華   「あれ?どこだっけかな?たぶんこの辺りに・・・あったっ!!
      懐かしいなー、おじいちゃん厳しかったけど、だからこそ今の私がいるんだよね。
      剣術なんて何の役にも立たないと思ってたけど、ずっとこの家に伝わる流派を叩き込まれたっけ。
      私が一応最後の後継者って事になるんだよね。
      こんな形でおじいちゃんに感謝する日が来るとは思わなかったな、ははっ......
      でも、こんなので本当に戦えるのかしら…ううん、戦わなくっちゃいけないんだ。
      それが私の望みだったんだもん。」

 


▼次の日

 

 

 

桃華   「もうすぐ0時...今度は負けられない。負けたくない!」

 

 

▼蝙蝠が飛んでくる、そして人間形態に変わる

 

 

カーミラ 「あ~ら、よく来てくれたわ、怖気づいてこないと思っていたのだけれど。
      流石は私が認めてあげた人間のようね。
      ...あら?何か持ってきたのね。」


桃華   「そうよ、貴方を倒す為の切り札見せてあげる」


カーミラ 「そんなもので私を倒せると思っているのかしら、やっぱり期待したのが間違いだったのかしらね。」


桃華   「それは実際に戦ってみてから確かめた方がいいんじゃないかしら?」


カーミラ 「・・・ふーん、なかなか小生意気な娘ね...わかったわ確かめてあげる。
      あなたたち人間がこの夜の女帝に。アンデッドの頂点に君臨する私に抵抗できるのかをね。」


桃華   「さぁ、はじめましょうか!」


カーミラ 「いいわ。掛かってきなさい。」


桃華   「でりゃーっ!!」


カーミラ 「そんななまくら避けるまでもないわ!私を守りなさい!ボーンウォール。」

 

 

▼カーミラの前に骨の壁が築き上げられる

 

 

桃華   「だぁーっ!」

 

 

▼壁が二つに切り裂かれる

 

 

カーミラ 「なっ!?骨の壁が切り裂かれるですって!!」


桃華   「貰ったーっ!!」


カーミラ 「ちっ、ならその武器を握りつぶしてあげ...ぐ、あぁーっ!!
      私の腕が...腕がーっ!まさか!?その剣...銀で出来ているのか!!」


桃華   「笑顔がくずれてるわよ?どうしたのかしらあの余裕の表情は。」


カーミラ 「小娘…よくも私の腕に傷をつけたな…許さない!ズタズタにしてあげるわ!!」


桃華   「何か来るっ!」


カーミラ 「紅の爪、彼の者に裂傷を与えん!ブラッディーネイル!!」

 

 

▼大きな赤い爪が桃華に襲い掛かる

 

 

桃華   「くっ、また変な術を!叩き切ってやる!」


カーミラ 「ふふふ、そのまま無残に切り裂かれなさい!!」


桃華   「こんなものっ!でりゃーっ!」


カーミラ 「なっ!私の術が効かない!?・・・まさかその剣に破邪の術式が組み込まれていると言うの!?」


桃華   「いける!これなら吸血鬼を倒せる!」

 

 

 

 

カーミラ 「くっくっくっ、小娘、何もわかっていないようね。
      その剣は人ならざる者を切る為だけに作られているのよ。
      いよいよ楽しくなってきたわ!!私も本気を出さないと危ないかもしれないわね。
      だから......本気で殺してあげる!(怒)」


桃華   「なっ、凄い殺気!これがあいつの本性だというの?」


カーミラ 「私をここまでコケにしたのは貴方が初めてよ、だから全力で捻り潰してあげるわ!!
 (詠唱) 七曜(しちよう)の欠片ここに集い かの地の門を持て開け 
      冥府の獄炎(ごくえん) 蛇(じゃ)と也(なり)て彼の者を食い潰せ!!ヘルフレイムバイト!!」

 

 

▼大きな炎のキバ登場

 

 

桃華   「ぐっ、熱い…」


カーミラ 「その炎は貴方を焼き尽くすまで永遠に食らいつくわよ!」


桃華   「くっ!」


カーミラ 「さぁ!逃げ回りなさい!!そして最後の断末魔を私に聞かせてちょーだい!!」


桃華   「私の技を舐めないで!!五芒断斬(ごぼうだんざん)!!!」


カーミラ 「なにっ!冥府の炎を切り払うつもりっ?!」


桃華   「だぁぁぁぁぁ!!」


カーミラ 「本当に切り払うなんて…」


桃華   「はぁはぁ…あとは貴方を切って終わりよっ!」


カーミラ 「ふふふっ、はははっ、あははははーっ!


桃華   「な、なにがおかしいのよ!」


カーミラ 「人間如きにこれを使うことになるとは思わなかったわ!」


桃華   「なっ!まだなにかあるっていうの!?」


カーミラ 「貴方は可能性を考えなかったかしら?なぜ私が月を欲したのか。」


桃華   「それは貴方が夜を独占するって…。」


カーミラ 「たしかにそれも理由の一つ、けれどもう一つは言っていなかったの。
      それはね...月の力を我が物にする為よ!」

桃華   「月の力・・・?」


カーミラ 「月の力は不死人にとっての魔力の塊なのよ!
 (詠唱) 我が手中の月よ、我に染まり朱に染まり。そしてこの身に宿れ!!ブラッドムーン!!!」


桃華   「!!急に月が戻った?…いえ、なにこれ...月が...赤い!?」

 

 

▼空気が震える

 

 

カーミラ 「ふははははははーっ!魔力が全身に行きわたるこの感覚!全身が絶頂しているようだわ!!
      名誉に思いなさい!私にここまでさせた事を!そして全力の魔力を受ける事を!!」


桃華   「来るっ!!」


カーミラ 「これで最後よ!
      私の全力受け取りなさい!!デーモンズジャベリン!!!」


桃華   「ダメっ、避けられない!?」


カーミラ 「安心しなさい!貴方は私の糧にしてあげるわ!!」


桃華   「ぐはっ……ここで終わりなの…ごめん…おじいちゃん…」

 

 

 

 

カーミラ 「はぁはぁ…もう流石に魔力切れね...ふざけた人間もいたものだわ。
      私にここまでさせるなんて…それよりもこの剣ね。
      忌々しい…さっさと処分してあげる・・・・・・
      なっ!!剣が桃華   の手に戻っていく!?」


桃華   「ぐっ…かはっ!はぁはぁ…あれ?私あの攻撃を受けて……
      なに!?頭の中に何かが入ってくる…」


カーミラ 「な、なんなのよこれは何が起きていると言うの、いえその前にさっさとトドメを刺しておかないと…
      くっ、力を使いすぎた…早くトドメを…。」


桃華   「そう…そうなのね…宿命だったんだ…ありがとう。教えてくれて…」


カーミラ 「何を一人ぶつぶつと・・・」


桃華   「桃太郎は鬼を退治しないとダメだもんね。」


カーミラ 「なぜ動ける!直撃したはずだ!!」


桃華   「私が動かないと物語が終わらないから…だから動ける。」


カーミラ 「なにっ!」


桃華   「返してもらうよ…みんなの宝物」


カーミラ 「や、やめろ…近寄るな!」


桃華   「終わりだよ、カーミラ。たぁぁぁぁぁぁぁ!!」


カーミラ 「に、人間如きに人間如きにー!ぎゃぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

▼カーミラ切られて灰になる

 

 

桃華   「終わったよおじいちゃん。そしてありがとう桃太郎の相棒さん・・・。」

 

 

 

 

桃華   「よかった、いつものお月様に戻ったみたい。
      こんなにお月様が愛しいと思ったのは初めて…守れてよかった・・・。
      よしっ!帰ろう!いつもの現実に...。」

 

 

 

 

カーミラ 「いつか復讐しにいくわ…それまで待っていてね。桃華ちゃん…ふふふふふふっ。」

 

 


END

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