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『夏の過ち』

 

 

 

 

青春時代の記憶が色濃く残る季節。

夏休み俺は童貞を捨てた。


今年の夏休みに入る間際、俺は告白された。


モテる事なんて無いと思ってた。
こんな自分でも見てくれている人がいるんだな。
そんな事を考えていた。


思わぬ告白に俺は二つ返事でOKを出した。


7月はデートを何度も繰り返した。
遊園地、動物園、ウインドウショッピングに、近くの公園。
楽しかった。


7月も終わろうとした時、キスをした。


キスってもっと素敵なものだと思ってた。
もっと甘いものだと思ってた。


だけど現実はそんな甘くなかった。
生暖かい物が唇に当たる。


ただそれだけだった。


8月に入ると二人で夏の課題を一緒にはじめた。


いつも決まって彼女が家にへ誘う。


両親の居ないタイミングで。


二人で課題を楽しくはじめる。
気づけば数時間たっている事も少なくなかった。


今回もそんな時間が流れるのだろうと。
そう思っていた。


いつもと空気が違う。


いつもの子供がはしゃぐ様な空気と違う。
なにか纏わり付く様なそんな違和感。


そんな奇妙な緊張感の中、
彼女は飲み物を取りに台所へと移動した。


喉がカラカラだ、動悸もする。
部屋の中はクーラーが効いている筈なのに汗が流れる。


帰ってきた彼女に「ありがとう」と感謝を伝え
飲み物を受け取る。


なぜか彼女は俺の方を見つめている。


なんだろうか?このイヤな感じは?


「暑いね」と言う彼女は元から薄かった上着を脱ぎだす。
たしかにさっきから汗が止まらない。
暑くは無いのだけど...。


薄着になった彼女は妖艶な目でこちらを見つめて来た。


俺に何を求めている?


気づけば向かい合わせに座っていた彼女が
隣にまで迫っていた。


夢にまで見た状況じゃないか。


でも、なぜだ?
なぜか、怖い。


彼女の眼はもう課題の事なんて忘れてしまったかのようだ。


俺は言われるがままにベッドに促された。


興奮なのか
それとも
違う何かなのか。


自分でも分からない感情に支配され
がむしゃらに行為に及んだ。


それから一時間ほど経ったのだろうか?


隣を見ると、彼女がかわいい寝息を立てている。


急にまた俺は怖くなり
その家を後にした。


後日


笑顔の似合う初めての彼女にこう言う。


「ごめんなさい。」


彼女は不思議そうな顔をするだけだった。


自分が獣に取り付かれたかの様な気がして
俺は怖かったのだ。


そして、そのはけ口にしてしまった事に。


初めての経験はそんな後悔しか残らなかった。


ひと夏の経験なんてよく言うけれど、そんな良いもんじゃないよ。


そう思って
僕は一つ大人になってしまったのだ。

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