一歩手前
おじさん:
子供:
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おじさんM:田舎から出てきて早五年、
都会に出てきて希望に満ちていたあの頃は仕事も順調。
しかし、今はどうだ?
3年前に仕事をクビになり、街の冷たさに落胆を隠せなかった。
俺は一人公園のベンチで100円のおにぎりをほお張りながら、
財布の中を見てため息を一つついた。
子供: ねぇねぇおじちゃん、お昼なのにどうしてこんなところにいるの?
おじさんM:(なんだ?このガキ。
ズカズカとデリケートな場所に入り込んできやがる。)
子供: ねぇねぇ、どうしてどうして?
おじさん: ああ、おじさんは自由な人なんだよ。
どんな時間でもどんな季節でも・・・何をしてもいい人なんだ。
子供: へぇー。いいなー、僕もそんな人になりたいな。
どうやったら、おじちゃんみたいになれるの?
おじさん: ははっ、おじさんみたいにならない方がいいぞ?
自由ってのはそんなにいいもんじゃないんだから。
子供: えー。そんな事ないよ、いつも学校とか塾とか宿題とか・・。
そんなの絶対大人になっても意味ないよ!
おじさん: んー、そうだな。
たしかに君が今やっている事は大人になっても使うことはないだろうね。
でもね?君の嫌いな勉強を頑張っていれば、
いい事がたくさんあるんだぞ?
子供: んー、でも自由にはなれないんでしょ?好きな事出来ないんでしょ?
おじさん: それは違うぞ、何もやらない者は最底辺の自由を手に入れる。
頑張った人には最上の自由を手に入れることが出来るんだよ。
子供: うーん。おじさんの言う事難しくてよくわかんないよ!
おじさん: ははっ、少し難しかったかな。
でもね、おじさんは頑張れなかったんだ。
子供: えっ、それじゃさっきの・・・なんだっけ?ていへんの自由だっけ?
それなの?
おじさん: そう、最底辺の自由だよ。君にはお勧めできないな。
子供: どうしてダメなの?
おじさん: それはね、もうなにも期待が出来ないからだよ。
最底辺の自由って何だと思う?
子供: うーん、わかんない!
おじさん: それは、、、この世から解放される事なんだ。
子供: むー、わかんない!!
おじさん: まぁ、そうだろうね。
子供: さっきからおじちゃんの話を聞いてて思ったんだけど。
おじさん: なんだい?
子供: 最底辺って一番下って事だよね?
おじさん: うん、そうだね。
子供: 一番下って事はあとは上に上がって行くだけなんじゃないの?
それとも、もう上に上がる気は無くなったの?
おじちゃんの言う自由は無くなるかもしれないけど、
もしかしたら、最上?だっけ?の自由になれるかもしれないじゃん。
おじさん: そうだねー、それじゃ少したとえ話をしようか。
子供: うん!
おじさん: もし君が崖の淵にいるとするよね?
子供: うん。
おじさん: 後ろからは怖い動物が追いかけてきているんだ。
君ならどうする?
子供: え?えーと、えーと、その動物を退治する!
おじさん: うん、そうだよね。
でも、その動物を倒す力が無かったらどうする?
子供: うーん、食べられちゃうのかなー?
おじさん: そう、食べられちゃうんだよ。
子供: でも、なんでそれが例え話なの?
おじさん: それはね、その怖い動物を倒すには君の努力が武器になるんだよ。
そうすれば、怖い動物に食べられる事はなくなるよね?
それが今君が嫌いな学校だったり塾だったりするんだ。
子供: それじゃあ、おじちゃんは学校とか塾を頑張らなかったの?
おじさん: いや、それなりに頑張ったつもりだったよ。
子供: じゃあ、さっきの話と違うじゃん!
おじさん: それは歳を取るにつれて、条件が変わってくるんだ。
今の君には勉強という武器があるよね?
子供: 武器なの?
おじさん: そう、りっぱな武器だよ。
でもおじさんには勉強をしてもそれは武器にならないんだ。
子供: えー。変なの!おじちゃんの武器って何になるの?
おじさん: そうだねー。もう何も無いのかもしれないね。
子供: 嘘だぁー、絶対なにかあるよ。
おじさん: あるのかな?君には何があるかわかるかい?
子供: わかんない!でも絶対なにかあるよ!
おじさん: ははっ、わからないよね。
子供: あっ!ママが迎えにきた!
おじさん: ああ、そうかい、気をつけて帰るんだよ。
君には希望がある、夢がある。
俺とは違うんだ。
子供: うん、僕がんばってみる!
おじさん: ああ、そうしなさい。
子供: それじゃおじちゃんまたねー!
おじさん: あー、またな。
(またね・・・か。)
■遠くから子供の声が
子供: おじちゃーーん!!がんばってねー!!
おじさん: !!
がんばる・・か。
あんなガキに励まされるとはね。
あーあ、自由はなくなるが、、、がんばってみるかな。
ははっ、まずはロープの変わりにネクタイを買わないとな。(笑い)
END